ゴズリング「この映画は、スタントマンがアカデミー賞を獲得するためのキャンペーンなんだ」
87ノース・プロダクションズが届ける、“ショービジネス界で活躍するスタントコミュニティへのラブレター”
本作の主人公、ライアン・ゴズリング演じるコルト・シーバースの職業であるスタントマン。『フォールガイ』は、娯楽映画の王道であるアクションシーンに欠かせない存在である一方、誰もがその妙技を目にしながら、誰にもその名を覚えられることのない影のヒーローともいえる彼らを真正面から扱った作品となっています。全編を通してスタントマンへの敬意に溢れているのは、スタントの分野で活躍していたという経歴を持つ、デヴィッド・リーチが監督を務めているからこそでしょう。今回は、そんなリーチ率いる、今ハリウッドで最も勢いのある映画製作会社87ノース・プロダクションズと、リーチとゴズリングの<スタント愛>へフォーカスしていきます。
監督協会の規定により『ジョン・ウィック』(14)の監督として正式にクレジットされているのはチャド・スタエルスキですが、リーチが共同で監督を務めたのは周知の事実です。このパートナーシップのきっかけを作ったのが、リーチの元マネージャーで現在は製作パートナーで妻でもあるケリー・マコーミックで、以来リーチは『ブレット・トレイン』、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』、『デッドプール2』、『アトミック・ブロンド』といった大ヒット作品の監督を務めることとなりました。
そして2019年にマコーミックとともに設立したのが、製作会社87ノース・プロダクションズ。現時点で、世界興行収入29億ドルという驚異的な数字を記録しています。カリフォルニア州サンセット大通り沿いにある大聖堂を改築して作られた本社には、トレーニングスタジオや撮影スタジオも併設されており、アクション・コーディネートやスタントマンの育成にも力を入れ、まだ設立から日が浅いながらも人々の注目を集める話題作を次々と手掛けている、まさに【進化し続けるアクション製作集団】と言えます。
こういった環境のもと監督として成功を収めたリーチですが、そもそも彼はスタントの分野で認められハリウッドでのし上がってきた気鋭であり、今も自身のルーツとは深くつながっているようです。「私の映画業界でのキャリアは、20年間スタントマンとしてパンチを受け、ワイヤーで吊られ、車で突っ込み、火をつけられ、全部門のスタッフと密に仕事をしてきた年月の上に成り立っている。映画への愛情が原動力になっているんだ。いろんな部門の人間と仕事をしてきたことで、映画製作のモデルを徹底的に学ぶことができた。仮に誰かに監督を辞めてスタント・コーディネーターに戻るよう言われたとしても、喜んで従うと思う。私にとって、友人たちと映画作りに励める撮影現場以外に居場所はないからね」と、リーチはその想いを吐露します。
また、主演を務めたゴズリングもスタントマンへの敬意を表しています。本作で肉体的にきついスタントやアクション・シークエンスにも挑戦しましたが、スタントを1つも自分でやらなかった最初の俳優として名が残ったとしても構わなかったようで、「これはスタントマンについての映画だから、得意分野は彼らに任せて、その偉業にスポットを当てたかった」と語っており、「でもスタントマンが毎日どんなことに向き合っているかを理解するために、いくつかのスタントは自分でやることが大事だった。僕は高所恐怖症だけど、ビルの12階から落ちるスタントをやらなきゃならなかった。これをきっかけに恐怖を克服できるかと思ったけど、そうはいかなかったよ。ただ、あの瞬間には克服できたのは、チームの皆を心から信頼していたからだ」と、リスペクトの想いを明かしています。
さらに先日アメリカ・ロサンゼルスにて開催された本作のLAプレミアイベントでも「この映画はショービジネス界で活躍するスタントコミュニティへのラブレターであり、スタントマンがアカデミー賞を獲得するためのキャンペーンなんだ」と前置きしつつ、「8回も火をつけられたり、ヘリコプターから飛び降りたり、車を8回転半横転させてくれたりした人に、どうやって感謝の気持ちを伝えればいいんだろう。この映画はまさにその一例なんだ。スタントマンたちが僕らのために何をしてくれるのか、彼らが映画にどう貢献しているのか、彼らが僕ら全員の為にたくさんのリスクを請け負ってくれている。彼らのストーリーを少しでも伝えることができて本当に光栄だ」と熱い想いを惜しみなく語り、会場は拍手喝采に包まれたそうです。